クジラ アタマ の 王様。 「クジラアタマの王様」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|伊坂幸太郎

伊坂幸太郎流“異世界転生”の物語 漫画との異色コラボ「クジラアタマの王様」|好書好日

クジラ アタマ の 王様

小説&コミックで物語を進行 主人公は製菓会社の広報担当、岸。 さて、この小説と絵にはどんな繋がりがあるのか? 伊坂幸太郎さんの『クジラアタマの王様』は、なんとも不思議なつくりである。 「以前、漫画雑誌の『モーニング』で『モダンタイムス』という小説を連載することになった時に、小説の中にコミックを入れたらどうだろうと考えたことがあって。 小説で殴り合いやカーチェイスを書いても、絶対に映画や漫画で観たほうが迫力がありますよね。 なので、小説の中にコミックを入れれば、活き活きさせられるんじゃないかと思ったんです。 それを何人かの編集者に提案したんですが、みなさんあんまりピンときていないようで(苦笑)。 でも以前から依頼をいただいていたNHK出版の砂原さんに提案してみたら〝いいですね、やりましょう〟と言ってくれたんです」 最初に考えたのは、昼間の現実的な生活部分を小説で、夜に主人公が見ている夢を絵で表現するということ。 「昼間は平凡なサラリーマンが、夜寝た後で夢で活躍するというもの。 トラブルを夢で解決するという、よくあると言えばよくあるパターンですよね(笑)」 というように、読み進めていくと絵のページは、岸が夜見ている夢の世界だと分かってくる。 岸自身は、朝目覚めた時にその夢をはっきりと覚えているわけではなさそうだが、夢の中では兵士が相当過酷な闘いに挑んでいる。 一般的な漫画とは違う、といって挿絵ともまた違うイラスト世界が絶妙だ。 「あくまでも僕の小説ということで、漫画家さんとコラボレーションにするつもりではなかったんです。 それで、コミックパートを誰に描いてもらうかを考えている時に、川口澄子さんの絵を見たら、シンプルで可愛いけれど漫画っぽくなくて、〝すごくいいじゃない〟ということになりました」 夢のパートをファンタジー風世界にしたのは、 「4、5年前からゲームの『モンスターハンター』にハマっていて(笑)。 最初は、自分がモンスターハンターの魅力を小説で表現できるのでは? なんておこがましいことを考えたんですけれど(笑)、調べたらモンハンはもう、すごい数の二次創作があって、じゃあ駄目だと思って。 ただ、現実世界とのメリハリをつけるために夢の部分はファンタジー的な世界にしようとは思っていました」 その現実世界で最初に起きるトラブルが、クレームに対応した謝罪会見、というのがまた非常に現実的である。 「謝罪会見が書きたかったんですよね。 責められるのも怖いし、ストレスだし、誰だってやりたくないじゃないですか。 一方的に責め立てる側への違和感もありますし。 どういう謝罪会見にするかを考えて、最初は病院の医療ミスなどが思い浮かんだけれど話が重くなる。 それで、食品会社の異物混入に辿り着いて。 そこまで書いてから次のトラブルをまた考えていきました」 小説パートの岸の奮闘と、夢パートの兵士の闘いがオーバーラップしていく展開だが、 「現実でトラブルが起きた時、夢の中で闘って負けると現実のトラブルが拡大してしまうという分かりやすい設定です」 とはいえ、先述の通り、岸は自分の夢をほとんどおぼえていない。 だが彼は、ひょんなことから、自分と同じ夢を見ている二人の人物と出会う。 都議会議員の池野内征爾、そして人気ダンスグループのメンバー、小沢ヒジリだ。 「モンハンってみんなでやるものだから、仲間がいるだろう、と(笑)」 会社員、政治家、アイドルというまったく異なる組み合わせがなんとも愉快。 「最初にお菓子メーカーの謝罪会見を思いついたので、テレビで有名人が薦めたから商品がヒットするという流れを考えたんですよね。 それで芸能人を登場させることを思いついたんです。 実は小沢ヒジリは、がんちゃん、岩田剛典さんをイメージしました。 中村文則さん原作の映画『去年の冬、きみと別れ』を観て、気になって。 テレビでよく見ると、〝王子さまみたいで恰好いいなあ!〟と感動して(笑)。 池野内を政治家にした理由はよく憶えてなくて……」 ただしこの池野内、清廉潔白な人物ではない。 愛人が何人もいるような人物だ。 「使命感に燃えるだけの政治家にはしたくなかった。 愛人問題を抱えている政治家でも、国民の未来を考えているかもしれないし、国を救うこともあるのかなと思って。 といって、奥さんが許しているなら愛人がいてもOK、となるのも違和感があるので、結構悩んだんですけど。 ただ好感度は高くないけれど頑張っている人にしたかったのかも」 ステレオタイプな人物像を登場させたり、奇麗事な考え方に着地させないのが伊坂作品の特徴であり、魅力でもある。 ただ、 「たぶん根底では、真面目な人に報われてほしいとは思っています。 だからワリをくっている人が報われるように、とは考えてしまう」 真面目な人と聞いてある登場人物を思い浮かべるが、後半、その報われ方にニヤリ。 相変わらずの伏線の張り方の巧さに唸るが、 「いつものことなんですが、最初からこれを後半で使おうと意識して伏線を張っているわけじゃないんです。 エンターテインメントを書くにあたって自覚的に伏線の種をまくこともありますが、後から〝ああ、ここで書いたこれが使える〟と思いついて、全体を整えていくことが多いんですよね」 超現実的な出来事は起きないエンタメ 「この小説にはあまり悪い人が出てこないけれど……」と伊坂さん。 いやいや、岸君の上司で、仕事をしないうえに人の手柄を自分のものとし、自分の失敗は人のせいとする部長は相当嫌な奴ではないですか! 「今日何件かインタビューを受けましたが、会う人会う人みんなあの部長が超リアルって言うんです(笑)。 あんなに仕事をサボるなんて漫画みたいって言われるかと思ったんですけれど。 でも、僕もサラリーマン経験があるので分かりますが、ああいう迷惑な人って本当にいますよね。 ただ、今回書き上げて気づいたのは、悪い人が出てくるといってもあの部長さんレベルで、いい意味で、すごく普通のエンタメを書いたなって。 殺し屋とかテレポテーションで入れ替わる双子とか出てきませんから(伊坂さんには殺し屋が出てくる『グラスホッパー』『マリアビートル』、双子が瞬間移動で入れ替わる『フーガはユーガ』という作品がある)」 確かに、謝罪会見の他にも岸はさまざまなトラブルに遭遇するが、どれも極悪人による犯罪や陰謀といった類いのものではない。 「そこが新機軸で(笑)。 どういうトラブルにするか考えなきゃいけないのが大変でした。 たとえば、通り魔的なものはもう書いたことがあるし、これまでとは違うものにしたくて。 悪人とか犯人とかがいない話にしようと考えたんです」 ただ、SNSで炎上して、人々の偏見や先入観が拡散して誰かを追い詰めていく状況も生じてしまう。 犯人を突き止めれば解決、というわけにはいかず、なかなかやっかいだ。 「先入観であいつは悪い奴だと決めつけられてしまうと、ますます追い込まれていきますよね。 謝罪会見なんて、理不尽なことを言われても言い返せない。 そういう状況がひっくり返るといいなと思いながら書きました」 そもそも岸たち三人はなぜ結びついたのか、少しずつ共通点が見えてくる。 金沢にある法船寺が鍵となるが、 「なにか夢にまつわるいわれのある場所がいいなと思っていて。 それで調べていたら、法船寺を見つけたんです。 ただ、僕自身は法船寺に行ったこともないので、地元の人にとって法船寺やそこの伝承がどれくらいメジャーなのか全然分からない。 金沢の人に呆れられたり、怒られたりしないか心配で」 伊坂さんといえば小説の舞台は仙台というイメージが強い。 今回は舞台のほとんどが東京だが、東北も出てくる。 「謝罪会見を行うような企業があること、アイドルと会う機会のある場所……などと考えて、今回は東京に住んでいる人たちの話にしたんです。 ただ、仙台近辺のほうがやっぱり書きやすいし、どこかは出そうかなと思っていて。 牡鹿半島が好きなので出しました」 〝 コラボレーション〟 についての考え 各章、コミックパートに関しては、 「砂原さんとこのパートでこんなシーンを入れましょうと相談して、脚本みたいなものを書いたんです。 僕より砂原さんのほうが細かく考えてくれました(笑)。 それを川口さんに渡して、出来上がった絵を見たらすごく良くて。 ファンタジー世界といっても、モンハンとかドラクエに似てしまってもよくないし、和風ファンタジーにするのもちょっとヘン。 その中間のファンタジーになればいいなと思っていたら、まさにそういう、バランスの絵を描いてくれました。 自分でもそれをモチベーションにして書き進めていったところがあります」 ただし、本作はあくまでもコラボではなく、伊坂作品にコミックパートのイラストがある、というつくり。 最近では「螺旋プロジェクト」で八組九人の作家と共通テーマで小説を書くなど、他のクリエイターとの共同作業をしている印象も強いが、 「僕からすると、真の意味でコラボレートしたと思っているのは阿部和重さんと共作した『キャプテンサンダーボルト』だけ。 あれはがっつり、お互いの文章をお互いに直したりもしましたから。 他の仕事に関しては、コラボレーションとは言えるんですけど、僕がやっていることはいつも通り小説を書くことなんですよね。 人と何かやっているという感覚はあまりなくて。 今回も僕が書いた小説について、分業で川口さんの力を借りたという感じ。 ただ、他の絵だったらまったく違うものになっていたと思う。 川口さんに会えてよかったです」 今後については雑誌に掲載した、小学生が出てくる短篇を本にする予定。 「書下ろしも含めて四本たまっていて、あと一本書くと一冊の分量になる。 これは僕にしては珍しく、たくさんの人に読んでもらいたいなと思っています」 珍しく読んでもらいたい、ということは、他の本に関してはどう思っているのだろう? 「好きな人が読んでくれればいい、とずっと思っているんですよね。 コーヒーなどの嗜好品と一緒で、僕と感覚の近い人が楽しんでくれたらそれでいいかなあ、って。 だから、合わない人が読むと、ぜんぜんつまらないから申し訳ない気がするというか。 ただ、その少年の短篇集は、僕なりに四十八年間生きていて大事だなって思ったことを盛り込んでいるので、いろんな人に読んでもらえたら、という気持ちなんですよ。 早く、完成させたいです」.

次の

伊坂幸太郎/クジラアタマの王様

クジラ アタマ の 王様

「クジラアタマの王様」概要 製菓会社に寄せられた一本のクレーム電話。 広報部員・岸はその事後対応をすればよい…はずだった。 訪ねてきた男の存在によって、岸の日常は思いもよらない事態へと一気に加速していく。 不可思議な感覚、人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥。 打ち勝つべき現実とは、いったい何か。 巧みな仕掛けと、エンターテインメントの王道を貫いたストーリーによって、伊坂幸太郎の小説が新たな魅力を放つ。 (より抜粋) 現実世界と夢の世界とが関連するパラレルワールド的内容で、ファンタジー感強めの作品です。 とはいえ、読み進めていくと「こんなことがホントに世の中に起こっているのでは?」と思えてしまうから不思議なものです。 伊坂さんが紡ぎだす心地よい文体と共感できるキャラクターが描かれているからこそ、そう感じられるのかなぁと思います。 夢の世界は漫画で表現 この作品の特徴的な点は、「現実世界」を文章で表現しているのに対し、「夢の世界」を漫画で表現している点です。 上記画像のように、夢の世界は漫画で描かれています。 しかも、セリフが一切出てきません。 「現実世界」は文章だけで表現しているのに対して、 「夢の世界」は画だけで表現しているのです。 想像力を切り替えながら読み進めていくことが求められる、非常に面白い実験的小説です。 後半から新型ウイルスに悩む社会が描かれる 作中の「現実世界」では、後半から新型ウイルスに悩まされる社会が描かれます。 【後半の概要】 海外で新型鳥インフルエンザが流行。 いつか日本にも感染者が現れるのでは?と恐れていたら、主人公の近くでついに感染者が出てしまう。 マスコミや近隣住民から犯罪者のように騒ぎ立てられる感染者たち。 主人公は彼らを守れるのか? この小説が発行されたのは2019年7月です。 コロナウイルスが問題になる約半年前に発表されていたのです。 作中に描かれている状況は、コロナウイルスで混乱する現代社会そのままを描いています。 ネット上で感染者を特定する熱が過熱。 様々なデマが横行。 感染者の自宅に群がるマスコミ• 不要不急の外出を求める行政府• 咳をしている人に対する冷たい視線• 騒動の中、海外旅行をした者に対するバッシング• 訪日外国人への差別• 日用品の買い占め などなど。 私がこの小説を読んだのは2020年4月なのですが、 「この小説ってたった今書かれたの?」と、何度も確認したくなりました。 それぐらい小説に書かれていることが、現代社会でもそっくりそのまま起こっていたのです。 人を動かすのは感情 作中のことが現実になったのはたまたまではなく、伊坂幸太郎さんの類まれなる洞察力の高さゆえのことかと思います。 作中で主人公はこのように言います。 人間を動かすのは、理屈や論理よりも、感情だ。 SNSの発達で感情が集合的に伝染しやすい状況になっている現代だからこそ、危機に瀕した時の社会の動きは予測しやすくなっているのかもしれません。 いづれにせよ、作者の洞察力の高さに驚愕した作品でした。 現代社会を客観視する上でおすすめの小説 結末は陰謀論的な内容になっているので、解決策は参考にはならないかもしれません。 むしろこの結末を真に受けた人が新たな敵を作り出してしまいそうな気がして怖くも感じます。 ただ、この作品を読めば、現在の社会的状況をメタ的に客観視することができます。 混乱している今だからこそ、この小説を読んで自分たちの行動を顧みても良いのかもしれません。 また、エンタメ小説としてももちろん非常に面白いので、ストレス解消のためにもお勧めできます。 伊坂幸太郎さんの小説を読んだ後に感じる「スカッと感」は今作でも健在です。 今作でカギを握るのは、ハシビロコウという大きな鳥です。 この情報だけでも面白そうじゃないですか?(笑) 物語には人を癒す効果があると思っています。 こんな時だからこそ、ぜひ小説を読んでみてはいかがでしょうか?.

次の

伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』感想/未来を切り拓くのは誰だ!?

クジラ アタマ の 王様

「クジラアタマの王様」概要 製菓会社に寄せられた一本のクレーム電話。 広報部員・岸はその事後対応をすればよい…はずだった。 訪ねてきた男の存在によって、岸の日常は思いもよらない事態へと一気に加速していく。 不可思議な感覚、人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥。 打ち勝つべき現実とは、いったい何か。 巧みな仕掛けと、エンターテインメントの王道を貫いたストーリーによって、伊坂幸太郎の小説が新たな魅力を放つ。 (より抜粋) 現実世界と夢の世界とが関連するパラレルワールド的内容で、ファンタジー感強めの作品です。 とはいえ、読み進めていくと「こんなことがホントに世の中に起こっているのでは?」と思えてしまうから不思議なものです。 伊坂さんが紡ぎだす心地よい文体と共感できるキャラクターが描かれているからこそ、そう感じられるのかなぁと思います。 夢の世界は漫画で表現 この作品の特徴的な点は、「現実世界」を文章で表現しているのに対し、「夢の世界」を漫画で表現している点です。 上記画像のように、夢の世界は漫画で描かれています。 しかも、セリフが一切出てきません。 「現実世界」は文章だけで表現しているのに対して、 「夢の世界」は画だけで表現しているのです。 想像力を切り替えながら読み進めていくことが求められる、非常に面白い実験的小説です。 後半から新型ウイルスに悩む社会が描かれる 作中の「現実世界」では、後半から新型ウイルスに悩まされる社会が描かれます。 【後半の概要】 海外で新型鳥インフルエンザが流行。 いつか日本にも感染者が現れるのでは?と恐れていたら、主人公の近くでついに感染者が出てしまう。 マスコミや近隣住民から犯罪者のように騒ぎ立てられる感染者たち。 主人公は彼らを守れるのか? この小説が発行されたのは2019年7月です。 コロナウイルスが問題になる約半年前に発表されていたのです。 作中に描かれている状況は、コロナウイルスで混乱する現代社会そのままを描いています。 ネット上で感染者を特定する熱が過熱。 様々なデマが横行。 感染者の自宅に群がるマスコミ• 不要不急の外出を求める行政府• 咳をしている人に対する冷たい視線• 騒動の中、海外旅行をした者に対するバッシング• 訪日外国人への差別• 日用品の買い占め などなど。 私がこの小説を読んだのは2020年4月なのですが、 「この小説ってたった今書かれたの?」と、何度も確認したくなりました。 それぐらい小説に書かれていることが、現代社会でもそっくりそのまま起こっていたのです。 人を動かすのは感情 作中のことが現実になったのはたまたまではなく、伊坂幸太郎さんの類まれなる洞察力の高さゆえのことかと思います。 作中で主人公はこのように言います。 人間を動かすのは、理屈や論理よりも、感情だ。 SNSの発達で感情が集合的に伝染しやすい状況になっている現代だからこそ、危機に瀕した時の社会の動きは予測しやすくなっているのかもしれません。 いづれにせよ、作者の洞察力の高さに驚愕した作品でした。 現代社会を客観視する上でおすすめの小説 結末は陰謀論的な内容になっているので、解決策は参考にはならないかもしれません。 むしろこの結末を真に受けた人が新たな敵を作り出してしまいそうな気がして怖くも感じます。 ただ、この作品を読めば、現在の社会的状況をメタ的に客観視することができます。 混乱している今だからこそ、この小説を読んで自分たちの行動を顧みても良いのかもしれません。 また、エンタメ小説としてももちろん非常に面白いので、ストレス解消のためにもお勧めできます。 伊坂幸太郎さんの小説を読んだ後に感じる「スカッと感」は今作でも健在です。 今作でカギを握るのは、ハシビロコウという大きな鳥です。 この情報だけでも面白そうじゃないですか?(笑) 物語には人を癒す効果があると思っています。 こんな時だからこそ、ぜひ小説を読んでみてはいかがでしょうか?.

次の