ピーター ティール。 競争よりも「独占」を ~ピーター・ティール~|TIME&SPACE by KDDI

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ピーター ティール

ピーター・ティールは大統領選中からトランプ支持を打ち出した。 彼の著書『ゼロ・トゥ・ワン』(NHK出版)の邦訳刊行直前の2014年夏、実は編集部からオファーしていたメディアインタビュー依頼に、ティール側が「1本だけ受ける」と言ってくれたことがあった。 ただ、本もまだ出ていなかったその当時、日本の大手メディア(「最も影響力のある媒体で」という注文付きだった)で彼のことを知る人はほとんどなく、結局実現しなかった。 そう、今からちょうど1年ほど前、彼が「トランプ支持」を打ち出すまでは……。 「エスタブリッシュメントからはゼロイチは生まれない」 ティールがリバタリアンであることは有名だけれど、そもそも日本では政治的な対立軸としてのリベラル(民主党)とリバタリアン(共和党右派)はあまり理解も意識もされていない。 ただ、メディア企業が圧倒的なリベラルの牙城であることは日本もアメリカも変わらない。 だから、これまでさんざんティールを持ち上げていた論調は、トランプが予備選に勝ったころから日本でもピタリと止まった。 かくいう僕もその1人だ。 邦訳刊行直後に、僕はあるメディアで「エスタブリッシュメントからは、ゼロイチは生まれない」というお題で『ゼロ・トゥ・ワン』の紹介記事を書いていた。 大統領選が民主vs共和ではなくエスタブリッシュメントvs非エスタブリッシュメントの様相をいよいよ見せ始めるにつれ、僕の困惑もますます深まっていった。 でも正直に言えば、「どうせ本戦でトランプが負けるまでの話」だとも思っていた。 橋渡し役としてシリコンバレーの最重要人物に 『ゼロ・トゥ・ワン』の要諦は「誰もがAだと信じているけれど真実はB」である「隠れた真実」を見つけろ、という「コントラリアン(逆張り)」の思想だ。 リベラル一色なシリコンバレーのテック企業の中で、唯一逆張りでトランプを支持したティールは、文字通り一人勝ちを収め、新政権とシリコンバレーの橋渡し役という貴重なポジションに立った。 ある意味、ティールは本当に「シリコンバレー最重要人物」になったわけだ。 でも2017年の今問うべきは、「なぜトランプを支持したか」ではもうないはずだし、ニューヨーカー誌のライターが書いて全米図書賞を獲った『綻びゆくアメリカ』によれば、ティールの共和党支持は、彼がレーガン政権の保守主義に感化されてリバタリアンになった10代のころから変わっていない。 「二進法の世界」だけは規制を免れてきた 生粋のリバタリアンであるティールにとって、諸悪の根源は政府による規制にある。 彼が「明確な未来を描けなくなった時代」という1973年以降、目覚ましいイノベーションが起こったのがコンピューターと金融の業界だけだったのは偶然ではなく、エネルギーや食料、製薬業といった他のすべての産業が既得権益と規制でがんじがらめの中、唯一、「二進法の世界」だけは規制を免れてきたからだ。 『綻びゆくアメリカ』で著者のジョージ・パッカーはこう書いている。 「情報化時代は確かに到来したが、ユートピアは現れていない。 自動車も鉄道も飛行機も、1973年と比べてたいして変化していない。 原油や食料の価格高騰は、エネルギーと農業分野における技術革新が失敗したことを意味する。 コンピューターは中産階級の暮らしを支えるだけの雇用を創出せず、製造業や生産性にイノベーションをもたらすことも、各階層の生活水準を向上させることもなかった」 「政府の失敗」と取り残された労働者や貧困層 食料や医療やエネルギーといった人々の生死や貧困の撲滅や生活の向上に直結する分野でイノベーションが起こらずに、その結果が『ヒルビリー・エレジー』に描かれるような、繁栄から取り残された労働者たちだとするなら、そもそもテクノロジーの進歩になんの意味があるだろう? 『綻びゆくアメリカ』の中でティールはすでに、取り残され分断された労働者や貧困層のことを指摘しながら、「政府の失敗」を鋭く突いていた。 社会が政府の規制でがんじがらめな時に、イノベーションがいかに不発に終わるかといった事例を探すのに、僕ら日本人はわざわざ国外に目を向けなくてもいいはずだ。 そしてついにティールは、そこに本格的な戦争をしかけたわけだ。 ティールは10代の頃から、共和党支持だと言われている。 つまり、これまで政治がテクノロジーをなんとか統べてきたとすれば、その時代の終わりの始まりがついにやってきたのだ。 ティールの有名な言葉に「空飛ぶ車を夢見ていたのに、手にしたのは140文字だ」というものがある(正確に言えば彼の投資ファンドであるファウンダーズ・ファンドのサイトに掲げられた)。 そこには、かつてのアポロ宇宙計画や超音速ジェット機のようには、テクノロジーがもはや社会の大きな革新に寄与していないという「テック・スローダウン」の思想がある。 時価総額で世界一をひた走るテック企業に対してもティールは手厳しい。 かつて彼は、ジーンズのポケットからiPhoneを取り出してこう言った。 「僕には、これがイノベーションだとは思えない」 今ならAIによるバトラー・サービス競争を指して、きっと同じことを言うはずだ。 「公共」を担う西海岸の私企業 これまで「公共」が担っていたどれだけ多くの機能が、いまや西海岸の一私企業によって担われているだろう。 かつてなら国や地方の行政が道路や橋といったインフラを作ることで、村と村を結びつけ新たなコミュニティと経済圏を作り上げていた。 いまや、世界規模で人と人、コミュニティとコミュニティを結びつけているのはフェイスブックだ。 世界中の情報と知識を無料で提供しているのは国の教育ではなくグーグルだ。 ティールは国や中央銀行の通貨発行権を奪おうとペイパルを始めたけれど、いまやブロックチェーンの技術でそれは現実になろうとしている。 社会的弱者や貧困を救うために、行政には所得再分配の機能があるけれど、社会的正義をダイナミックに実現しているのは今やゲイツ財団であり、ザッカーバーグの財団、LLCであり、テクノロジーを使った「効果的利他主義」のムーブメントだ。 公衆衛生? 心配しなくてもいい。 数多のスタートアップがあなたの寿命伸長とウェルビーングの面倒を見てくれるようになるだろう。 なぜザッカーバーグは治療法開発に私財を投じるのか 有名なWIRED誌の初代編集長ケヴィン・ケリーに言わせれば、デジタルテクノロジーによる脱中央集権化、分散化、民主化は「不可避」なトレンドだ。 それはリバタリアン的世界観にも通じるけれど、シリコンバレーのリベラル寄りのテック企業も軒並みそれを担っている点で、これはもはや政治の対立軸というよりも、政治そのものが飲み込まれようとしている大きな流れだと言える。 たとえば「ザッカーバーグは選挙で選ばれたわけじゃないのに、なぜビジネスだけじゃなくて貧困や平和とか言ってるんだ?」という批判は常につきまとう。 でも5兆円とも言われる私財を「あらゆる病気の治療法を開発する」ことに使うのは悪いことではないし、世界で最も成功したビジネスパーソンがそれを運用するよりも、民主主義的な選挙で選ばれた政治主体が運用するほうがより良いパフォーマンスを出す保証は、もはやどこにもない。 彼がこれまでに海上独立国家や寿命1000歳や宇宙開発に投資してきたのは、一見博打のように見えて実はその時点で一番現実的な選択だったからだ。 だからこそ、政府に先んじて、規制のないうちに大きなイノベーションを起こさなければならない。 ティールはシリコンバレーの経営者と政権を橋渡しする役割を担っている。 かつてテック企業が規制当局とぶつかるのは独禁法に抵触したからだった。 それがいまではAirbnbやUberをはじめ、破壊的イノベーションのどれもが既存の既得権益を侵害してまっさきに当局とぶつかることになる。 だからスタートアップにとっては、予めロビイングして許可をとっておくか、あるいはステルスで市場を席巻してデファクトスタンダードになってからグレーや真っ黒な規制違反を謝るか、といった選択を迫られるわけだ。 実際、シリコンバレーでは今、政界とのコネクションを持つロビイストの需要が高止まりしているという。 『ゼロ・トゥ・ワン』の中で僕がとても印象に残っているのも、「それを作れば、みんなやってくる?」という営業の重要性を説いた章だ。 華やかなスタートアップの世界ではとかくプロダクトに注目が集まるけれど、少なくともティールに言わせれば、営業はプロダクトと同等かそれ以上に重要だ。 特に、スペースXでNASAと数十億ドルのディールを勝ち取ったイーロン・マスクを引き合いに出した「コンプレックス・セールス」の事例や、実際にFBIやNSA(アメリカ国家安全保障局)を顧客に持つ彼の企業パランティアは、政府機関と喧嘩をせず巧みにディールしていくティールのビジネスセンスと志向性を如実に表している。 だがもうひとつのやり方がある。 それは、規制破壊を厭わない大統領と一緒になって、「政治の機能をテクノロジー側に奪う」ことだ。 それこそが、ティールが今回踏み出した一歩だと、僕は考えている。 実際、トランプ就任後にティールはニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに答えてこう語っている。 「トランプが何でもかんでも変えてしまうと皆騒ぎ立てているけれど、私にとってのリスクは、トランプがあまりに少しのことしか変えられないんじゃないかというものです」 これまでは規制でがんじがらめの分野への投資を避けてきたというティールが、トランプ政権の政権移行チームで手腕を振るったのは、何もテック企業のCEOたちを招集してトランプと手打ちさせた会議だけではない。 むしろあれは単なるショーに過ぎなくて、ティールがやりたいのは、政府とシリコンバレーの橋渡しといった予定調和な役割ではなく、テクノロジーと科学を政治から解放することなのだ。 ティールが仕掛けたトロイの木馬 そのために、ティールと数十年来の仲で彼のクラリウム・キャピタル・マネジメントの責任者だったケヴィン・ハリントンが国家安全保障会議(NSC)の上級スタッフとして送り込まれ、商務省の人事を握った。 ZenefitsのCFOでペイパル時代からのティールの友人マーク・ウールウェイは政権移行チームに入って財務省の人事を差配した。 同じくクラリウム・キャピタルのCFOでその後ティール・キャピタルのチーフスタッフも務めたマイケル・クラツィオスはトランプ政権のCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)に就任した。 これはホワイトハウスにおいて科学やテクノロジー政策に関与する立場だ。 ティールのミスリル・キャピタル・マネジメントの責任者で、不老長寿を研究するSENSE研究財団や海上都市Seasteadingのボードメンバーも歴任したジム・オニールは、FDA(米食品医薬品局)のトップ候補として名前が上がった。 彼は、「企業は薬を売り出す前に臨床試験を行わなくてもいい」と言って物議をかもした人物だ。 結局その人事は見送られたけれど、トランプは、新薬の承認のスピードを劇的に上げる規制撤廃方針を明確化した。 国家の主権は国境を越えないけれど、テクノロジーはやすやすとそれを越えていく。 だからテクノロジーはアメリカの政治機能を奪うだけでなく、この日本で政治が担っていた機能をも同じように奪っていくと思っておいたほうがいい(もしいま、あなたがMacBookやiPhoneのスクリーンでFacebookやGoogleを使っているならなおさらだ)。 その時、従来政治が担っていた「規制」という名のセーフティネットはどうなるのだろうか? 政治とは、国家とは何か AIが進化してシンギュラリティが到来し、人類が滅亡するといったいまどきの議論があって、少なくとも欧米ではずいぶん真剣にそのことが議論されている。 たとえばAIについては、専門家たちが集まってAIの研究・倫理・将来の危険性について「アシロマAI 23原則」にまとめ、スティーブン・ホーキングやイーロン・マスクやレイ・カーツワイルらがそれに賛同している。 もはや一国の政府や民意ではテクノロジーをコントロールできず、また国家という単位がますますアイデンティティの拠り所として内向きのナショナリズムを喚起する中で(国家とは結局のところ、ウェーバーの言うところの「暴力の独占」だけがその機能になるのかもしれない)、こうした動きが「政治という民意反映プロセスを越えたエリートの暴走」なのか、「政治という機能不全を回避した新たな地球規模での意思決定プロセス」なのかは、まさに「ティール的問題」として議論が分かれるはずだ(こうした会議を主導するのも、それにトランプの政権移行チームも白人男性ばかりだという事実も気に留めておいていい)。 だがメディアが「フェイク・ニュース」だ「オルタナ・ファクト」だと相変わらずリベラルな議論を続ける中で、いまトランプのアメリカで起こっていることは、そしてティールが目指していることは、つまりはそういうことなのだ。 (本文敬称略) 松島 倫明:編集者、NHK出版 放送・学芸図書編集部編集長。 手がけた主な著書に、デジタル社会のパラダイムシフトを捉えたベストセラー『FREE』『SHARE』『MAKERS』『シンギュラリティは近い』『ZERO to ONE』『限界費用ゼロ社会』『〈インターネット〉の次に来るもの』がある一方、世界的ベストセラー『BORN TO RUN 走るために生まれた』の邦訳版を手がけて自身もトレイルランナーとなり、いまは鎌倉に移住し裏山をサンダルで走っている。

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ピーター・ティール

ピーター ティール

ピーター・ティール(Peter Thiel) シリコンバレーで現在もっとも注目される起業家、投資家。 1998年にPayPalを共同創業して会長兼CEOに就任し、 2002年に15億ドルでeBayに売却。 初期のPayPalメンバーはその後「ペイパル・マフィア」と呼ばれ シリコンバレーで現在も大きな影響力を持っている。 情報解析サービスのパランティアを共同創業したほか、 ヘッジファンドのクラリアム・キャピタル・マネジメントと、 ベンチャーファンドのファウンダーズ・ファンドを設立。 Facebook初の外部投資家となったほか、 航空宇宙、人工知能、先進コンピュータ、エネルギー、 健康、インターネットといった分野で 革新的なテクノロジーを持つスタートアップに投資している。 去年、糸井重里が たいへんおもしろがった本のひとつが ピーター・ティールさんが書いた 『ゼロ・トゥ・ワン』でした。 なにしろ、糸井重里は、 この本をまるまる2回、読みました。 それは、けっこう、めずらしいことです。 本の著者であるピーター・ティールさんは、 「いまシリコンバレーでもっとも注目される投資家」 とメディアにしばしば紹介されます。 1998年にPayPal(ペイパル)という インターネット上で決済するサービスを共同創業し、 その後、ベンチャーに投資する会社を設立。 Facebook初の外部投資家となったほか、 航空宇宙、人工知能、エネルギーといった さまざまな分野に革新的な提案をする 新しい企業に投資を続けています。 ちなみに、ピーターさんをはじめとする PayPal(ペイパル)の創業メンバーは、 現在も個々に投資家として活躍し、 YouTube、テスラモーターズ、 LinkedIn、スペースXといった アメリカの価値あるベンチャー企業を いくつも起ち上げています。 IT業界に大きな影響力を持つ彼らは 「PayPalマフィア」の異名をとるようになりました。 ピーター・ティールさんは、 その「PayPalマフィア」の中心的な存在です。 『ゼロ・トゥ・ワン』は、 ひさびさに興奮させてくれる本だった。 自信たっぷりな断定に満ちた語り口なのだが、 強気な調子とは裏腹に、言っていることは、 ぼくにはしごく真っ直ぐなことに思える。 著者は採用面接で必ず訊く質問があるという。 「賛成する人がほとんどいない、 大切な真実はなんだろう?」 そんな問いかけに対して、 「わたし」はなにを答えられるというのだろうか。 利口そうな「正解」を知っているかどうかなんて、 ここでは、なんにも役に立たないのだ。 そうして、著者自身がよく知っている 90年代のネットバブルの狂騒と数々の失敗について、 また、そこから得られたはずの「教訓」が語られる。 読者であるぼくらは、それを「なるほど」と思いかける。 すると、すかさず、もう一度ひっくり返される。 見透かされたように、揺さぶられるのだ。 そして章は「何よりの逆張りは、 大衆の意見に反対することではなく、 自分の頭で考えることだ。 」と結ばれるのだ。 この本を学ぼう(まねぼう)などとする態度は、 ことごとくかく乱されひっくり返されていく。 読み進めて行くと「競争というイデオロギー」について、 かなり詳しく説明がはじまる。 「競争」なんかが進化をつくるんじゃなく、 重要なのは「独占」だというような考えが披露される。 ここらへんから、ぼくはもう、この本を読んでいる間、 じっくりと著者と遊びまくろうと覚悟を決めたのだった。 この著者は、読者と同じ高さの場所に立って、 自身を奮い立たせ、読者を挑発してくる。 頭と心に汗をかいたぼくは、少し勇気を大きくした。 (2014年10月17日 糸井重里「今日のダーリン」より) そのピーター・ティールさんが、 今年の2月に来日し、 日本の読者のために講演を行いました。 そして講演後の第二部として、 糸井重里とトークイベントを行いました。

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ピーター・ティール(Peter Thiel) シリコンバレーで現在もっとも注目される起業家、投資家。 1998年にPayPalを共同創業して会長兼CEOに就任し、 2002年に15億ドルでeBayに売却。 初期のPayPalメンバーはその後「ペイパル・マフィア」と呼ばれ シリコンバレーで現在も大きな影響力を持っている。 情報解析サービスのパランティアを共同創業したほか、 ヘッジファンドのクラリアム・キャピタル・マネジメントと、 ベンチャーファンドのファウンダーズ・ファンドを設立。 Facebook初の外部投資家となったほか、 航空宇宙、人工知能、先進コンピュータ、エネルギー、 健康、インターネットといった分野で 革新的なテクノロジーを持つスタートアップに投資している。 去年、糸井重里が たいへんおもしろがった本のひとつが ピーター・ティールさんが書いた 『ゼロ・トゥ・ワン』でした。 なにしろ、糸井重里は、 この本をまるまる2回、読みました。 それは、けっこう、めずらしいことです。 本の著者であるピーター・ティールさんは、 「いまシリコンバレーでもっとも注目される投資家」 とメディアにしばしば紹介されます。 1998年にPayPal(ペイパル)という インターネット上で決済するサービスを共同創業し、 その後、ベンチャーに投資する会社を設立。 Facebook初の外部投資家となったほか、 航空宇宙、人工知能、エネルギーといった さまざまな分野に革新的な提案をする 新しい企業に投資を続けています。 ちなみに、ピーターさんをはじめとする PayPal(ペイパル)の創業メンバーは、 現在も個々に投資家として活躍し、 YouTube、テスラモーターズ、 LinkedIn、スペースXといった アメリカの価値あるベンチャー企業を いくつも起ち上げています。 IT業界に大きな影響力を持つ彼らは 「PayPalマフィア」の異名をとるようになりました。 ピーター・ティールさんは、 その「PayPalマフィア」の中心的な存在です。 『ゼロ・トゥ・ワン』は、 ひさびさに興奮させてくれる本だった。 自信たっぷりな断定に満ちた語り口なのだが、 強気な調子とは裏腹に、言っていることは、 ぼくにはしごく真っ直ぐなことに思える。 著者は採用面接で必ず訊く質問があるという。 「賛成する人がほとんどいない、 大切な真実はなんだろう?」 そんな問いかけに対して、 「わたし」はなにを答えられるというのだろうか。 利口そうな「正解」を知っているかどうかなんて、 ここでは、なんにも役に立たないのだ。 そうして、著者自身がよく知っている 90年代のネットバブルの狂騒と数々の失敗について、 また、そこから得られたはずの「教訓」が語られる。 読者であるぼくらは、それを「なるほど」と思いかける。 すると、すかさず、もう一度ひっくり返される。 見透かされたように、揺さぶられるのだ。 そして章は「何よりの逆張りは、 大衆の意見に反対することではなく、 自分の頭で考えることだ。 」と結ばれるのだ。 この本を学ぼう(まねぼう)などとする態度は、 ことごとくかく乱されひっくり返されていく。 読み進めて行くと「競争というイデオロギー」について、 かなり詳しく説明がはじまる。 「競争」なんかが進化をつくるんじゃなく、 重要なのは「独占」だというような考えが披露される。 ここらへんから、ぼくはもう、この本を読んでいる間、 じっくりと著者と遊びまくろうと覚悟を決めたのだった。 この著者は、読者と同じ高さの場所に立って、 自身を奮い立たせ、読者を挑発してくる。 頭と心に汗をかいたぼくは、少し勇気を大きくした。 (2014年10月17日 糸井重里「今日のダーリン」より) そのピーター・ティールさんが、 今年の2月に来日し、 日本の読者のために講演を行いました。 そして講演後の第二部として、 糸井重里とトークイベントを行いました。

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